あゝ、荒野

あゝ、荒野

LIFEの杉山です。映画「あゝ、荒野」を観ました。
原作・寺山修司、監督・岸善幸、主演・菅田将暉xヤン・イクチュン。
「あゝ、荒野」は前編と後編に分けての公開、合わせると5時間を超える大作です。
原作は同名の長編小説ですが発表されたのは1966年。
映画では2021年という、東京オリンピック後の設定。

あゝ、荒野


あゝ、荒野

しかし何でしょう?この匂い立つ昭和臭は。
そこには昭和を駆け抜けた故寺山修司の魂が宿っているとした思えません。
この映画は少年院上がりの新次と吃りで赤面対人恐怖症のバリカンという2人の傑作青春ボクシング映画です。
すでに言ってしまいました。
傑作です!
あゝ、荒野

熱量が凄いです。
映画ってストーリーや監督やキャストやスタッフなど、その作品に関わる人たちの熱量が高いと名作を生む気がします。
そのいくつかが低くても、そのいくつかが突出していることで面白い映画になりえることはあるとは思いますが、そのどれもが高い熱量を持って生まれた作品は本当の名作と呼ばれるものになりえるのだと思います。

あゝ、荒野

あゝ、荒野

あゝ、荒野

その意味で「あゝ、荒野」は名作と呼ばれるに値する熱量を帯びまくっていました。
菅田将暉とヤン・イクチュンの役づくりも半端ではありません。
当初、菅田将暉はガリガリでヤン・イクチュンはぽっちゃりしてるくらいで、両者の体重差は20キロ近くだったそうです。
それをボクサーとしての身体を作りながらの増量と減量。
その役者としての魂が見事に劇中の新次とバリカンというキャラクターに命を吹き込んでおります。

あゝ、荒野

あゝ、荒野

この映画には色気があります。
性的描写が多いことも取り沙汰されていますが、そういったシーンの直接的なものだけではなくその表現のセンスを含めて作品の全体から香り立つ色気があると思います。
そんなわけでストーリーについてはほとんど触れてないわけですがスタッフやキャストな魂の叫びが聞こえてくる素晴らしい邦画だと思います。
そして寺山修司と親交があったという写真家の森山大道が手掛けたイメージビジュアルが素敵です。

あゝ、荒野

店の看板が異様にひしめくSF映画に出てくるセットのような路地のカオス感と、そこに佇む2人の姿が印象的です。

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