Stolen from strangers

最近はもっぱらテレビを見る事が少なくなった小生ですが、10代の頃などは好きな番組などを楽しんだりしておりました。
ほとんどがフザケタ番組やヘンテコな番組でしたが。
近頃のCMはウルサクてイラっとしたりするモノが多いのですが、思いおこせば当時のCMは面白いモノが多く、変な話ですが好きなCMがあったりした事を思い出しました。

その名前を知ったのは何かは忘れましたが、CMでながれている音楽が気になって調べました。
その後も何度かその名前を耳にして意識しだした事が記憶にあります。
その名前は三宅 純。

Stolen from strangers

三宅氏は京都生まれで鎌倉育ちの音楽家で幼少時にジャズに衝撃を受けられて以来、独学でフリージャズを追求されていたそうです。
トランペット奏者の日野皓正氏にニューヨークに渡って本場でジャズを学ぶ事を勧められてバークリー音楽大学へ入学。
独学で始めたトランペットでプロに混じってセッションなどはされていたそうですが、バークリーにすんなり進学されるなんて凄い才能です。エリートですね。

トランペットやフリューゲルホルンなどの管楽器を主に演奏されていますが、ピアノやフェンダー・ローズなどキーボードでの演奏、プログラミングも自身でされるそうです。
帰国後はジャズバンドなどで活動、作曲などをされているところにテレビCMの仕事の話が舞い込んできたそうです。

芸術性などよりも売れるかどうかが価値基準のレコード業界にストレスを感じられていた氏には短く限られた時間内に音を当て込む作業が非常にスリルを感じられ、またジャズを感じられたそうです。

バブル全盛時のCM業界黄金期。
才能豊かなクリエーターも集結し、また企業はこぞってテレビCMに資金を投じ始めており、それも魅力があったのでしょうが、才能ある音楽家に企業やクライアントは次々と仕事の依頼をする様が安易に想像出来ます。

三宅氏はCM音楽を制作する時、初めに基本となるメロディーを作曲して、その後そのメロディーを他人が作曲したと仮定した上で即興で音を追加していくそうです。
まさしくジャズの方法論そのものです。
自由度が少なくなったCM界からは少し距離を置かれ、進化したテクノロジーがある現在は三宅氏は拠点をフランス、パリへ。

日本にいた頃より音楽業界の中では常にどこか異端であったでしょうが、活動拠点をパリに移されてからも過去の作品に感じられた異種交配を多用した有機的な音が更に妖しく、ノスタルジックで緊張感あるアルバムを数年前に発表されておりました。
氏の作り出される音が好物な小生ですので、過去の作品も多くを所有して楽しんでおります。
数年前に発表されたマストな一枚「Stolen from strangers」

Stolen from strangers

ジャンルという分け隔てはもはや皆無。
氏のコンダクトした人選も雰囲気のあるアーティストばかり。
アート・リンゼイをはじめヴィニシウス・カントゥアリア、ピーター・シェラーなどのここ最近の常連組から、リサ・パピノー、アルチュール・アッシュ!やブルガリアン・ヴォイス!!など多彩なストレンジャーやクセモノのゲスト達。
濃厚な雰囲気を纏ったヒリヒリするアルバムです。

お時間がおありの方はどうぞ。
三宅氏の音源が使われた懐かしいアンディー・ウォーホールのTDKのCM。

アルバムの雰囲気を大きく左右する一曲目、ブラジルのバイーア、サルヴァドール育ちのNYっ子アート・リンゼイがボーカルを務める「Alviverde」。

ロサンジェルス生まれでパリ在住のリサ・パピノーのボーカルが官能的な「est-ce que tu peux me voir?」を。

トレビアン。