童夢

私が小学生の頃に親の知り合いが喫茶店を経営されていて、親の用事などがある時に何度か連れられて行っていた。 
オーナーさんと親が話し込んでいる間、退屈しのぎに置いてあった週刊誌や雑誌などに目を通していると一冊の漫画本が目に入った。 
大友克洋の『童夢』という漫画であった。 
大友氏の描いた漫画を目にしたのは初めてであったが、描かれる絵はやたらと精密で圧倒的な画力に心惹かれた。

童夢

成熟なガキではあったが、少年誌などに慣れ親しんでいた小学生の自分には初めて目にする世界観。
作品に漂うホラー的な暗さや異常さにはまってしまい、親の用事が済み帰宅する事を促されても席を立たずに漫画に夢中になっていた記憶がある。

小学生くらいの多感な時期の子供は本当に気が多い。
興味の対象が超広いので店を出た瞬間に違ったモノに気が移ったのかどうかは記憶に無いが、それが『童夢』との初めての遭遇であった。

その後、数日間は何となくその漫画の事を思い出すぐらいであったが、数週間後には再び喫茶店へ向かった。
一人でお店を訪ねたので、お店の人に何か用事があるのか聞かれたが、漫画を見たいと店主さんに告げると「好きなだけ見て良いよ」と言われホットココアか何かをお願いし、もう一度最初からページをめくった。
誰にも邪魔をされる事も無く世界観に没頭し完読。
ホットココアも平らげ、お礼を言ってチャリで爆走。
貯金箱から小銭をかき出し数十分後には本屋さんにてゲットしたのは言うまでもない。

童夢

若い刑事の高山が上司である山川刑事部長と着任した現場は昭和の高度成長期に多く建てられたような平凡なマンモス団地。
団地内で続く謎の変死事件を捜査するのだが、多くの不可解な出来事に直面する。
更には山川刑事部長までもが不可解な死を遂げる。

事件の真相は意外と簡単に明らかにされるが、登場人物達がほとんど狂人のオンパレードなので訳が分からない祭りみたいな感じに。
超能力少女のエッちゃんと一見、呆け老人のチョウさんのサイコキネシス合戦!
団地内は色んな意味で崩壊し続け、同作者による『AKIRA』のネオ・トーキョーよりもある意味、現実と非現実がカオスに交錯して爆烈崩壊。
一冊の読み切り漫画本としては異例の完成度であると思う。 
童夢といえばこの「ズン」ですが、借り物の画像でスンマソン。

童夢

数十年間、実写映像化を望んでいる作品であるが、数年前にギレルモ・デル・トロ監督作品にて映画化のインフォメーションを耳にしたが、ダメダメ。
勿論ノーハリウッドで日本を舞台に日本人キャストでしか意味が無いと断言しておきたい。 
とまあ、ここまでお読み頂いた方はチンプンカンプンだと思われますが、あとはお待ちのお時間にLIFEにてお読み下さい。
うなされるかもしれないのでご注意を。
もう一冊購入してADOREにも置いておきたい。