クライマーズハイ
興奮しすぎてクライミングつながりで以前呼んだ横山秀夫「クライマーズハイ」を読み返しまでしてしまいました。
そして改めてやっぱりこれは良い本や…とここでも感動。
本当に良い本です。
映画化もされているのでご存知の方も多いのでは。
悠木は今、衝立岩に向かう。
果たされなかった友との約束の為に。
命懸けの岩登りの最中に頭を巡るのは自分の人生を大きく変えたあの日々…。
戦後最大の航空機事故としていまだ生々しく語り継がれる日航ジャンボ機墜落事故。
あんまりにも悲しい事故として私も今まで度々耳にしたり、映像を見る事がありました。
遺族の方や関係者が現場となった山に毎年慰霊登山をされている姿に自然と涙が落ちました。
その事故の当時、著者の横山秀夫さんは墜落現場の群馬県で記者をされていたそうです。
鳥肌が立つような描写や緊張感はそのせいなのか…と納得。
悠木は地元新聞紙の記者。
事故の全権デスクを任される。
その重責の中、したいものと周囲からの様々な圧力との狭間で仕事を進める内、次第に報道とは何か。
記者の仕事とは。
との根源的な問いに向き合うようになる。
そして、事故と時を同じくして倒れた同僚、安西は何故衝立岩に自分を誘ったのか…。
彼の言葉の意味とは。
話は現在の悠木、衝立岩に果敢に立ち向かうスリリングな場面と、悠木の回想、未曽有の事故によって仕事や人生観さえも大きく変えられる事になる激動の日々。
現在と過去を行きつ戻りつどちらも緊迫感を増して行き頁を繰る手を止められなくなります。
横山先生の本を読んだのは初めてなのですが、物凄い力量の素晴らしい作家さんだと思わされました。
映画化されている作品も多く、「顔」や「出口のない海」など映画では見たのですがどちらも良い映画で原作も読みたいと思いました。
悠木と同じようにこの事故に肌で触れた横山先生。
でも感情にブレすぎる事もなく、しかし事故の規模や遺族の悲しみが胸に迫るようで、それと同時に仕事や報道というものの本質に切り込む鋭さ。
描かれている事は深く広いのに文章自体は簡潔で読みやすく、テンポ良く進んで最後には美しい景色が。
まるで山登りのよう。
この本は、常連のお客様に教えて頂いた本です。
転勤で京都を離れられ、今は来ておられませんが何故かこの本はその方のイメージです。
教えて頂いてすぐに読まずに、この本についてお話し出来なかったのが少し心残りですが、こんな良い本との出会いをもたらして下さったあの方に感謝、感謝です