想像ラジオ
LIFEの杉山です
最近は夏かと思うくらい暑い日もあったりして、暖かくなった嬉しさと裏腹に、丁度いい気温の季節の短さに寂しさも感じずにはいられません
話は変わりますが、「想像ラジオ」という、いとうせいこうさんの小説が文庫化していたので購読いたしました
海沿いの小さな町の、高い杉の木の上から発信される想像ラジオ
軽快な語り口と素敵な選曲で、パーソナリティーを務めるのはDJアーク
リスナーは思い思いの時間に「想像」というチューニングを合わせラジオを受信します
なんだか不思議な世界ですが、一見ファンタジックにも思える、その世界のテーマは東日本大震災です
忘れられない、忘れてはいけない出来事。でも時間の経過とともにメディアの報道は少なくなり、僕も恥ずかしながら震災に対する思いが少しずつ薄れていってしまっている事実は否めません。
DJアークのもとに届くリスナーの声は、被災者の人々の声
そのやりとりに、月並みではありますが命の尊さを感じさせられ、なおかつ今も大変な思いで毎日を過ごしておられる方々が沢山いるという現状を再認識させられます。
この本は長編小説ではありませんし、すぐに読み終えることができますが、本の帯にある読者の方のコメントにも物語のテーマの大きさや深さを感じずにはいられません
震災による被害を受けていない僕がいろいと語るのは、どうしても安っぽくなる気がしますし、やすやすと語れるほどの立場の人間ではないとは思いますが、それでも大切にしないといけないものがあるということ、それを感じずにはいられないお話でした。
想像することは簡単かもしれないけれど、想像することが無ければ、いろいろな想いに辿り着くとともできないのかもしれないし、少なくとも薄っぺらな僕にも、震災に対して、命に対して、改めて想像を余儀なくされた「想像ラジオ」は貴重な一冊でありました
この小説は、いとうせいこうさんが16年ぶりに書かれた小説だそうですが、その沈黙を破るに相応しい心に残るお話だと思いました
未読の方は是非
いとうせいこうさんも渋い雰囲気になられましたね