インサイドマン
story
マンハッタンの銀行で強盗事件が発生。
頭脳明晰な犯人グループのリーダー、ダルトンは人質全員に自分達と同じ格好をさせ捜査を撹乱する。
交渉の糸口が見つからず当惑する捜査官フレイジャー。
「奴らの目的は何なのか?何かがおかしい・・・」。
女弁護士ホワイトが犯人との交渉役として現れる。
前代見聞の“完全犯罪”の謎とは―。
出演:デンゼル・ワシントン、ジョディ・フォスター、クライヴ・オーウェンほか
長い間、ブラックカルチャーを題材としてきた作品を撮り続けてきたスパイク・リーが、黒人たちがメインに登場しない映画を撮り始めたのは1995年のサマー・オブ・サムからである。
インサイドマン(2006)は、それに加えて、リー初の娯楽大作だろう。
子供のころは結末がはっきりしない映画には悶々としたものだが、大人になるにつれ、結末の解釈を自分で考えることの楽しみを知り、その曖昧感を味わえるようになってきたものだ。
オチが重要になってくるサスペンスにおいて、本作のラストも真実を導く演出はありながら、ほんのりと味わい深い余韻を残す。
リー得意の、登場人物がこちらに話しかけてくるようなドキュメンタリータッチな演出とカメラワークも、この作品でも観ることができる。
リー作品の常連であり、リーの盟友でもあるデンゼル・ワシントンや、珍しくビッチな女弁護士を演じるジョディー・フォスター、そしてやはり本作はこの男、クライヴ・オーウェンだろう。
カリスマ臭をプンプン漂わせながら、クールな銀行強盗を演じている。
リーの作品にしては、スター俳優が多く出演している本作だが、警察役で怪優ウィレム・デフォーも登場している。
こちらは、あまりいい役回りとは言えず、彼が好きな方々としては少し残念である。(私を含む)
オープニングから流れる曲、『Chaiyya Chaiyya』の軽快なリズムがエンドクレジットで再び顔を見せるその時まで、2時間飽きさせず楽しませてくれる作品だ。
余談ではあるが、伊坂幸太郎氏の『チルドレン』という小説に出てくる銀行強盗たちの手口が本作『インサイドマン』の強盗たちの手口と酷似している。
飛ぶ鳥を落とす勢いの伊坂氏であるが、氏が映画好きということもあり、この件に対し「伊坂氏!?」という、よからぬ疑念を抱いた私であったが、『チルドレン』は『小説現代』2002年11月号を皮切りに掲載されたものであり、2006年作である『インサイドマン』のほうがだいぶ後の作品ということになる。
まさかスパイク・リーが伊坂氏の『チルドレン』から発想を得た、というのは考えにくい話ではあるが、なにはともあれ伊坂氏、失礼いたしました~。