宮本輝「オレンジの壺」
ずいぶん以前にですが、お客様からオススメ頂いた本をやっと読みました
宮本輝「オレンジの壺」
離婚したばかりで傷心の佐和子。
亡き祖父から遺された祖父の日記を読み祖父の過去を知る。
日記に魅せられた佐和子は若い頃の祖父の足跡を辿る旅に出る為、パリに飛ぶ。
祖父が佐和子に日記を託した理由とは一体…。
この本を勧めてくださったお客様はパリがお好きで、この本の中にパリを旅する描写があり、情景が目に浮かぶようでとってもステキ、とおっしゃってました
佐和子もパリに行きますがおじいさんの日記の舞台もパリで、お客様の言葉の通りパリに行った事のない私でもイメージが広がりホントにパリに行きたくなっちゃいました
最初は傷心の佐和子の物語かと思ったら、祖父の日記の中の謎を解くサスペンス的な展開になり、舞台もパリからエジプトへと広がります。
そしてなんといっても下巻に更なる謎が隠されており物語はどんどん深く幾重にも重なった模様を織り成します。
買ってから何年も読まなかった本でしたが、なんでもっと早く読まなかったんだろう…と思いましたね
本当に面白い本でした。
宮本輝の本を読んだ事自体初めてでしたが、すごい作家さんだなあと思います
ぜひ他の本も読もうと思います。
佐和子が謎を追う祖父のパリ渡仏時代は、第二次世界対戦前の非常に世界的に不安定な時期。
どこを触れても一触即発、というような不穏な空気の中で佐和子の祖父は事業を成功させる為、単身パリに渡る。
祖父の運命も、戦争という大きなうねりの中に呑み込まれ…。
佐和子という女性の成長、消えない戦争の傷跡、家族の絆…
こんなに重いテーマをさらりとしたタッチで描き、しかし読後はいつまでも余韻が消えません
別れた夫に「女としても人間としても全く魅力がない」と揶揄された佐和子が、祖父の波乱万丈の人生を辿るうちに大きな変貌を遂げる様がとても気持ちが良いです。
読後感がとてもさわやか
また別のお客様から宮本輝の「草原の椅子」という本も勧められた事があるのですが、そちらは映画化されてもうすぐ公開なのです
次に読もうと思っていたのですがなんとこのタイミングで映画化とは…
本を先に読むか映画を見るか、迷うところです
佐藤浩市主演で、これも面白そう
草原の椅子は、宮本文学の最高峰と言われているそうで、期待が高まりますね