浅草善哉
昨年末にお客様のご紹介により、東京より京都へ引っ越しされて間もないお客様がご来店くださいました。
古賀絵里子さまは福岡のご出身で、大学進学の為に上京されて以来は写真家としてご活動され、地元九州のお話や写真を撮ることの楽しさ、興味深いお話を多数お聞かせくださいました。
せっかくのご縁ですので、後日お教え頂いた古賀さんの写真集「浅草善哉」を購入させて頂きました。
舞台は浅草。
古賀さんは下町の雰囲気がお好きだそうで、三社祭で偶然に出会われた善さんとはなさん老夫婦と親しくなられ、いつしかふたりが住まわれる長屋へ通われるようになられたそうです。
善さんとはなさんとのエピソードもご来店時に楽しくお聞かせ頂いておりましたので、一枚一枚を興味深く楽しむことが出来ました。
お二人のあいだにある仲睦まじいムードや、ふいに見せられる鋭い一枚、古賀さんが撮られる審美眼にクラクラいたしました。
あとがきによると六年間にわたり、お二人のもとを訪れるたびに言葉にはできないが大切な何かがはっきりとそこにあるのを感じられたそうです。
その場が放つ独特の存在感に、畏れの入りまじった悦び、心に救いを与えられたそうです。
善さんとはなさんに感謝をされる記述をされたあとに、このように書かれています。
「写真以上の言葉を私は持ちません。
誰もが観ることを通じて、見えない何かを感じていただければ幸せです。」
ただただ濃密な世界を、心に深く感じ入ることが出来ました。
素敵な出会いに感謝いたします。