駅 STATION
高倉健さんがお亡くなりになられて数日が経ちました。
突然の悲報に驚きましたが、今日は健さん主演の『駅 STATION』のお話を。
降旗康男監督、倉本聰脚本、木村大作撮影の1981年東宝による作品で、音楽は出演も兼ねて宇崎竜童。
私は割りかし洋画を鑑賞することが多いのですが、好きな映画は何度も繰り返し見るのが流儀でございます。
映画がお好きなお客様との会話の中で、邦画で健さんのお話をすると意外に思われることが多々あります。
しかし実は私の心の一本です。
映画は冒頭、北海道は銭函駅のホーム。雪が絶え間なく降り続いている。
健さん演じる三上英次と妻直子を演じる、いしだあゆみさんとの別れのシーンから始まる。
いしださんの演技があまりにも美しく、その切なさから、駅に残された三上=健さんの哀愁が更に引き立っている。
物語は直子、すず子、桐子、三人の女性のサブタイトルがつけられている。
人生を駅に例え、男と女。様々な出会いと別れが描かれているのだが、健さんの重厚な演技と、脇を固める俳優達の上手さ、美しい色添えを加える女優達。
また情緒に満ちた演出も素晴らしい。
この作品は話の断片が一つ一つ描かれているのだが、観客は話の進行に少し躊躇されるかも知れません。
私は得意の妄想で頭の中で話を繋ぎ、演者に感情移入して見ることが出来ますので、気にはならず楽しめました。
この映画の持つ重いムードが好みです。
健さんは本当に雪のシーンが似合われる。
シブい。シブすぎる。
劇中、三上の故郷の御冬への連絡船が出る増毛駅で船が欠航し、三上は駅近くの居酒屋に立ち寄るのだが、一人店を切り盛りする女将の桐子を演じる倍賞千恵子さんとの絡みがグレート。
桐子はどこか寂しさを漂わせ、テレビからは紅白歌合戦で「舟唄」を八代亜紀が唄っている。
健さんと倍賞さんの二人きりの長回しのこのシーン、セリフと表情、間合いなど全てが素晴らしい。
舟唄が添えられているところも含めてパーフェクトすぎる。
他の作品でも共演が多いお二人でしたが、いつまでも語り継がれるであろう、このシーンを見るだけでも価値があります。
いつもこのシーンを見ると、燗で頂きたくなります。
これからも末永く、高倉健さんの出演されている映画を楽しませて頂きたいと思います。
心よりご冥福をお祈りいたします。