キップ・ハンラハン / Real Time And Beautiful Scars
キップ・ハンラハン / Real Time And Beautiful Scars
Kip Hanrahan / Beautiful Scars
LIFE / LIFE ADOREのタチバナです。
NYブロンクス出身のアイリッシュ系ユダヤ人のキップ・ハンラハンは、パーカッショニストであり、プロデューサー、American Claveレーベルオーナー。
彼の作り出す音楽は、アフロキューバンジャズやラテン、ファンクやロックなどをミックスしたような独特でいて繊細。
決してメインストリームに属すことはないが、音楽の奥深さを感じさせてもらえる稀有な存在です。
プロデューサーとしても素晴らしく、緻密にアーティストの魅力をより感じさせる作品に仕上げるプロです。
American Claveよりリリースされるアーティストのプロデュース作は、いつも彼がイメージする音楽を体現するために、個性豊かな様々なスタイルのアーティストが呼び寄せられて構築されている。
しかし完成するものは、いつもキップ・ハンラハンの痕跡が感じられる作品になっています。
プロデュース作品では、歴史的名盤だと言われているAstor Piazzolla「Tango:Zero Hour」が最も有名ではないでしょうか。
レーベルの記念すべきファーストリリースは、JERRY GONZALE「YA YO ME CURÀ」
夏のお知らせで収録曲の「Nefertiti」をリンクしていました。
前作がAmerican Claveのアーティスト作品も含んでいましたが、実質上ソロアルバムと言っても良いニューヨリカンの詩人ミゲル・ピニェロの半生を描いた映画「Piñero」のサウンドトラック(契約上の問題で正式なサウンドトラックではない)でした。
今作「Beautiful Scars」は6年振り、2008年にリリースされたオリジナルアルバムです。
参加メンバーはエルネグロ・オラシオ・エルナンデス、ロビー・アミーンやミルトン・カルドナ、ペドリート・マルティネス...
彼らの叩き出す複雑でなおかつ正確なリズムは、American Claveの核を担う。
そしてDeep Rumbaのシオマラ・ラウガー、様々なスタイルにも対応する職人ベーシストのフェルナンド・ソーンダース、カサンドラ・ウィルソンのブログでご紹介していたブランドン・ロスも今作ではギターと共に数曲でボーカルを担当…などキップ氏の音楽に必要なミュージシャン達。
知性を感じる、憂いを帯びた味わい深い作品になっております。
キップ氏の作る音楽はラテンがベースにありますが、中南米のカリブ海の元、燦々と輝く太陽の下で奏でられるラテンミュージックとは違い、NYダウンタウンの雑踏の中で生まれる音楽。
多くの移民達の住むコミュニティの中で、様々なアイデンティティの異種交配がなされ作り出される音楽だと思います。
「Real Time And Beautiful Scars」
ポエティックな歌詞と視界が拡がっていくような疾走感のあるサウンド。
この知的なムードを漂わせた独特な世界観は、キップ氏が90年代に制作していた「A Thousand Nights And A Night 千夜一夜物語」の一連の作品の延長線上にあるのが分かる。
紛れもない極上のMake Love Musicだと思います。