塩田千春展:魂がふるえる
LIFE ADOREの一圓です。
開催直後から人気のこちらの展示、 至る所で紹介されておりますが、 少しだけ今回の展示についてのご説明を。
1972年大阪府岸和田出身。
パフォーマンスアーティストの「マリーナ・アブラモヴィッチ」 に感銘を受け、ベルリンに移住後彼女に師事。
その後ドイツの女性アーティストレベッカホーンのも師事し、 現在もベルリンにて制作を行っている。
そして私はまるで導かれるかの様に、
終ってから思いましたが、 この人の作品に触れた事は自分にとって凄く重要なキーだったはず だと。
展示の内容や構成については美術手帳のホームページにて、たいへん丁寧に紹介されていたので私は割愛させて頂きます。
エントランスの白と初めに目に飛び込んでくる赤、 そして中盤に現れる黒。
それぞれに意味があり、スケールの大きさは元より、 彼女がこの現場に残していったエネルギーの粒子みたいな物を感じ ました。
美術関係のお客様と話しておりましたが、女性アーティストが「 生と死」など深い題材を抱えた時に、 何かドロッとした物が伝わり「怖い」「気持ち悪い」「不気味」 という印象も与える事があると思います。
それだけ力を感じさせるのでしょうね。
今回の個人的な感想としては、 驚くほどピュアな感情の持ち主だなと感動しました。
展示物は一瞬ドキッとする物でありながら、 展示パネルの説明書きは意外とシンプルでとても人間らしく感じま した。
作者の伝えよう、伝えたいという思いも自然と感じたので、 異世界の空間ではありながら多くの人々がフリースペースに腰を下 し、居心地良さそうに過しておられたのが印象的でした。
絵画などを観に行くと、 観てる側もまた観られている対象に感じる事があります。
そういった物とは違い、勿論展示物を「鑑賞」するのですが、 なにか対話の様に考えさせられる様なアートで、 気付けば彼女の感覚に寄り添っていました。
強くて、儚くて。
もがいて、痛みを伴って、ストンと収まっていく感じ。
この展示は5日間で約30人程の人員により作られたそうです。
糸をピンと張ってホッチキスで留めていく。
後半のスーツケースは彼女がベルリンでコツコツ集めた物だそうで 、440個もあるんですって!
展示の大きさが写真で伝わり切らないかもしれませんが、 5日間で?!と驚きました。
以前にも舟形の作品など一部制作済の物だったそうですが、 今回の展示用に新しく18点が発表されています。
作品の美しさから、 スタッフのアーティストに対するリスペクトを感じます。
現在彼女には娘さんがおられるそうで、 展示の終盤辺りで娘さんの同じ年くらいの子供に「魂について」 質問をし、子供達が思い思いに答えるビデオが流れています。
とても興味深く、何周か観てしまいましたが、その中で男の子が「 僕たちは、魂と共に生きていて、 魂の喜ぶ事をしてあげれば良いと思う」と答えていました。
正直この言葉に深く感銘を受けました。
魂と肉体を切り離して考えるよりも、 もっと能動的に自分で自分に与えて豊かにする。
それは楽観的でシンプルで、人らしい歩み方だと思いました。
ちょっと上手く書けませんが、作品には魅了されるパワーが漂い、 また完成度の高さが物質的な物としても目も心も奪われていた事は 間違いないです。
塩田氏は現在癌と戦っておられ、 今回の展示が恐らく大きな個展では最後かもしれないとも言われて います。
もちろん更にパワーアップした個展と再会したいですが、 だれにおいても「今」というのは「今」しかなく、 その時の物は再現出来ても、 エネルギー群は再現出来ないと思います。
塩田氏のこの感情、パワー、感性。
目で観て肌で浴びて堪能しました。
彼女の「今」はいづれ誰しもリンクする「死」 と向き合って出来た物だと思うと、胸に突き刺さる光景でした。
【詳細】
塩田千春展:魂がふるえる
会期:2019年6月20日(木)〜10月27日(日) ※会期中無休
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)※火曜日のみ17:00まで(最終入館 16:30)
料金:一般 1,800円、学生(高校・大学生) 1,200円、子供(4歳~中学生) 600円、シニア(65歳以上) 1,500円
問い合わせ先(ハローダイヤル):03-5777-8600